第293回 運動は苦手(中編)

中学では部活は剣道部であった。といっても中学から始めたのではない。実は小学校2年生の時から剣道を習っていたのだ。実は母方のいとこが同じく小学生から剣道を習っており、それに母が刺激を受けて自分も習わされたというのが実情である。

まず最初の難関は着替えである。剣道をするには袴をはかなければならなくその際に後ろで袴のヒモを結ばなければならない。それが小学生の低学年の自分にはできなく常に誰かになってもらわなければならなかった。よく親御さんが同伴して自分の息子の着替えを手伝っている方がおられたが、なかなか後ろでうまくヒモを結べない自分の姿を見るに見かねて手伝ってくれたりしたものだ。自分もいつの間にかそれに甘えてしまい、常にヒモを後ろで結べなく困っているようなしぐさをして結んでくれるのを待っていたものだ。今思えばなんとも情けないことだ。誰かに頼らずに自分でできるようにならなければならないという自立心が全くなかったのだ。つまりそういう小学生であった。

さて剣道はもちろん自分から習いたいといったのではないため気乗りはしなかった。練習では防具をつけての稽古があるが、竹刀でたたき合いをするわけなのでとにかく痛いことが多い。なかでも稽古で防具をつけていないところをたたかれたり、防具をつけていても強く当たると痛いのだ。

逆に自分も攻める時に相手の防具をつけていないところをたたいてしまわないかと遠慮したりするのでなかなか思い切ってはいけない。よって試合にはださせてもらっても勝つことはほとんどなかった。

あと、剣道には級や段といった認定の試験がある。小学生は最大1級までとれるようになっており、初段からは中学生にならないととることはできないという決まりがある。級の認定には確か最後に相手と一対一の試合を数分間してそれをみて合否を決めることになっていたかと思う。自分は親が必ず受けなさいと言うので毎年必ず級の認定試験を受けており小学5年生までに2級にまで合格した。といっても実力がなくても級の場合はたいてい受ければ合格するのである。

しかし小学6年生で受けた最後の1級は残念ながら不合格であった。さすがに1級は実力がないと合格はできなかった。その最後の認定試験の試合でのこと。自分としては果敢に攻めたつもりでいたが対戦相手にボコボコにされてしまった。のちにその相手は中学の同じ剣道部に入って再開することになったのだが、彼はその時1級の試験を合格したと言っていた。

実は中学校でも剣道を続けたが、それには母親から中学でも剣道部に入りなさいと言われたからだ。自分としては将棋が好きだったので将棋部があれば絶対に入りたかったが、残念ながら将棋部はなかった。もし剣道部にはいったら1万円あげるからといった母親からの誘惑に負け結局、剣道部に入部した。

その中学の時に入った剣道部では中学生から剣道をやり始めた同期が4人いた。もちろん自分は小学校からやっている経験者であり最初はもちろんその同期よりも上手であったが、最終的に3年生の夏に部活を引退するまではその4人ともに抜かされてしまった。さらにもっとショックだったのは自分が入った一年後に入部した初心者の後輩にも抜かされてしまったことである。これには相当参った。

蛇足ではあるがその後輩は高校時代に野球部に入り、甲子園にレギュラーで出場していたのだ。自分は当時、家でその高校野球の全国大会のテレビをみていて、その彼がでていたことにびっくりするとともに、才能のある人は最初から違うなと思ったものだった。

長々と書いてしまったが自分の運動音痴がおわかりいただけたのではないか。つらいことが多かったように思うが、唯一剣道をやっていてよかったことは、やはり運動部ということで先輩との上下関係や礼儀や集団でのマナーやふるまいなどを学べたことが大きかった。終わってみてばいい思い出で、良い経験ができたと思っている。

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