人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。こころにのぞみおこらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え。勝つことばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。おのれを責めて人をせむるな。及ばざるは過ぎたるよりませれり。
この文章はあの徳川家康の遺訓である。いきなり何を長々と書いたかというと、実はこの家康の遺訓は自分が予備校時代に知ったものである。当時大学受験に失敗し、浪人して予備校に通っていたことに授業中に当時の校長が話してくれたのである。
当時は大学へ行けなかった不安定な身分で、まわりの同級生はすでに大学生で自分の一歩先を行っている。自分のこころの中は焦りと不安とで入り交ざっていたことと思う。そういう時にこの文章に出会い、今の自分の境遇と似通っており思わず心に染み入ったのだと思う。
何を思ったのかこの遺訓を聞いて授業が終わった後、自分はこともあろうにその校長のところへ行き、その読みあげてくれた家康の遺訓の文章をコピーさせてほしいと頼み込み、コピーをして一緒に授業を受けた友達にも渡したことを覚えている。それだけこの内容は当時の自分にとってインパクトが強かったのであろう。
特に冒頭部分の「人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くがごとし」というところが好きな部分である。たとえ今は大学受験に失敗して不遇な境遇にいるが、それにくじけずにやっていこう。人生は長いのだから、いっときの失敗した期間も将来のなんらかの糧になっていくだろう。徳川家康も若い時には苦労が絶えなかったが、最終的には天下をとったのだからと思い自分を慰めていたのかもしれない。
戦国武将の中では自分は徳川家康が一番好きであるが、今でも自分を家康に重ね合わせていることがある。日常生活でも自分の思い通りにいかないことが多々あるが、その時にふとこの家康の遺訓があったことを思い出す時がある。よって今回はこの機会に書いてみた次第なのである。
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