第296回 コーヒーとジュース

子供から大人になるにつれて味覚や味の好みも変化してくる。今日はそういった話。

自分が子供の頃に好きな飲み物といえばもちろんジュースであった。逆に今の自分が毎週必ず飲んでいるコーヒーは子供の頃は苦くて砂糖を入れないと飲むことはできなかった。

それが年を重ねるにつれて、今ではジュースが全く飲めなくなり、逆にコーヒーは砂糖を入れないブラックでないと飲むことができないようになった。

思えば不思議なものである。子供の頃はコーヒーを飲む大人をみて、どうしてあんなものがおいしいのかが分からなかった。もし大の大人がジュースを飲んでいるのを見られた場合、子供っぽくみられるため恥ずかしいから恰好をつけて飲んでいるのかさえ思った。

しかし大人になった今だから分かるのは、子供の頃の味覚が年齢を経るにつれすっかり変化してしまったということである。大人になった今では、ジュースだと飲んだ後の後味が甘くて口の中がスッキリしないのである。例えて言うのなら、夏の暑い日にアイスクリームを食べた後に口の中に残るあの甘い感じである。何か飲まないと口の中が気持ち悪いという感覚である。

だから今では、コーヒーに砂糖は絶対に入れないし、ジュースを飲むくらいなら、後味がさっぱりしたお茶か水を飲む。そういった理由で今ではジュースが飲めないのである。

同様に、子供の頃はハンバーグや肉が好きであったが、大人になるにつれ脂っこいものよりもさっぱりとした魚や煮物などの味を好むようになってきた。昔はそんなものが何でおいしいのか全く分からなかったが、年齢を経るにつれて旨みが分かるようになったというか、繊細な味がおいしく感じるようになってきたのである。

思えば大学卒業時に自分が行きつけの洋食のレストランへ両親を食事に連れて行った時のこと。自分ではとても満足のいく味であったため両親もとても喜んでいくれると思っていたところ、少し味が濃かったと特に父親は少々不満げであった。当時はその理由が分からなく自分としては納得がいかなかったが、今自分がその両親と同じ年代に達してからはそれがよく分かるようになった。

味覚の変化。当時は分からなかったことも、今ではよく分かる。逆に言えば自分もそれだけ歳をとったということか。昔に解けなかった謎が解けたのだが、何だか複雑な気分である。

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