第176回 やらないことも大切

最近ここ数年で読む本は投資に関するものが多くなった。国のスローガンである「貯蓄から投資へ」といった流れもあって自分も積み立てNISAをやっている。自分が毎月お金を出して積み立てている商品の特性を知ることも大切だと思い、投資信託や株に関する知識をつけるべくそれらに関する色々な本を読み漁っている。

今回は今読んでいるものも含めて自分がこれまでに読んできたものに共通している考え方で特に大切だと思う点について触れていきたい。

まずは投資で大切なことは長期で保有するということ。途中であれこれと買ったり売ったりしないことである。

よく一番投資で成功した人はどんな人かという質問の答えで、最もよくあげられるが「すでに死んでいる人」、もしくは「投資していることを忘れた人」というものがある。つまりは長期間手をつけずに放置していた人が最も成果をあげた人ということである。

人間だれしも、自分が保有している金融商品に対しては元本に対して上がったか下がったかということが気になるものである。よって値動きにとらわれて色々と売ったり買ったりして触りたくなるものであるが、それ気にせずにいったん買ったら長く持ち続けるか、毎月コツコツと積み立てを継続していくことが最善手だということである。

今読んでいる本にはそのことをサッカーのPK時におけるキーパーの動きにうまく例えられていた。PK戦では主にキーパーは相手のシュートを止めるために右か左に飛んでセーブをする。しかし実はどちらにも飛ばずに真ん中にいて相手のシュートを防ぐ方が約60%の確率で止められるというデーターがあるそうである。

しかし観客であるサポーターにしてみればどちらにもキーパーが動かないのは一生懸命にやってないとみなされ、当のキーパーもそういう非難を恐れて、結局は心理的な面でどちらかに飛ぼうという選択をしてしまいがちであるということである。

つまりたとえシュートを止められなかったとしても、どちらかに飛ぶということは止めようと努力したとみなされ、逆に真ん中で止めようとする行為は何もしてないとみなされ、後に非難の対象となりうる可能性があるということである。

だからたとえ真ん中で構えていることが正しいとは分かっていても、心理的に作用してどちらかに飛んでしまう方を選びがちになるということである。

これを投資にあてはめてみても、いったん買ったら、または毎月一定額を積み立て設定したらそのままにしておくことがよいとは分かっていても、ついつい気になって触って色々と売り買いしたいという衝動にかられる。その方が投資をちゃんと実行しているという実感がもてるからでもある。

自分はこれをパチンコといったギャンブルにあてはめてみた。自分も過去に数回やったことはあるが今は全くやっていない。ちなみに過去にやった時はいずれも負けて終わっている。

つまり多くの場合はパチンコをやれば勝つ時もあれば負ける時もある。どちらかといえば負ける方が多いであろう。それを時間と費用とを使い、何とか負けを取り戻した。これでトントンだ。と思っていても、結局それは何もならないのと同じである。逆にやった分だけ時間を投資したためやった感は感じられるが、結果だけをみればやならいのと同じ。か、むしろ何もやらなかった方が損をしていないことになる。

投資の格言に「投資は本来は退屈なものである」というのがある。逆にドキドキとしたスリルのあるものは投資ではなく投機であり、大きく儲けられるチャンスはあるが同時に損をする確率も高くかえって危険なものである。安全な投資とは感情に左右されずにコツコツと自分の決めたルールに従って堅実に行うものである。

最後に、投資やサッカーやパチンコだけでなく、動いた方が心理的に充実した感じを覚えることはそれ以外にもあると思う。例えば自分はお店では店長をしているが、作業を自分はやらずに従業員にやらせた方がよいこともある。

もし自分がやれば自分自身はやったという充実感は感じられるかもしれないが、逆にいえば部下の成長を止めたことにもなる。状況にもよるが、ここは自分がやりたい気持ちをグッとおさえて作業をうまく割り振りそれを裏でフィードバックする方が部下を育てるといった本来の店長の仕事をしたことにつながるかもしれない。

自分自身も動くことによって満足したという幻想、つまりやった感にとらわれることなく物事の本質を見極める目をもてるようになりたいと感じた。冷静に状況を見極めて、どちらをやるかという選択肢の他に、いったん消極的にみられるかもしれない「どちらともやらない」という選択肢もありなんだなという視点を今回もつことができた。

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